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第1回:法律は変わらないのに「最大の転換点」—2026年10月改正の全体像 <連載>労務管理と健康管理の実務 — 2026年から2028年の法改正を読み解く(全8回)

省令と告示の改正だけで、なぜ実務が大きく動くのか。改正の経緯と「3層構造」から全体像をつかみます。

今回から始まる8回連載

こんにちは、分かりやすさNo.1社労士の先生の先生、岩崎です!

今回から8回にわたり、2026年10月1日に施行されたパートタイム・有期雇用労働法関連の改正を取り上げます。「法律そのものは改正されていないのでしょう?」と思われた方もいるかもしれません。おっしゃるとおり、今回の改正は省令と告示の改定にとどまります。それでも私は、この改正を同一労働同一賃金の本格施行以来の「最大の転換点」と位置づけています。第1回では、その理由を改正の経緯と全体の構造から確認していきます。

出発点は「施行後5年」の見直し規定

話は2018年にさかのぼります。この年に成立した、いわゆる働き方改革関連法の附則には、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法について、施行後5年を目途に施行状況を勘案して所要の措置を講ずるという見直し規定が置かれていました。今回の改正は、この「宿題」に応えるものです。

厚生労働省の労働政策審議会では、職業安定分科会と雇用環境・均等分科会の同一労働同一賃金部会で計14回の審議が重ねられ、2025年12月に部会報告が取りまとめられました。これを骨子とする省令・指針案要綱が2026年3月に諮問・答申され、同年4月28日に公布されています。さらに4月30日には通達「『労働条件通知書等の普及促進について』の一部改正について(基発0430第1号)」が発出され、一連の改正が2026年10月1日から施行・適用されました。

3つの規範が連動する「3層構造」

今回の改正を理解する鍵は、3つの規範が役割を分担しながら連動している点にあります。雇入れ時の手続を定める「施行規則」、労使コミュニケーションと雇用管理の手続を定める「雇用管理指針」、そして個々の待遇差が不合理かどうかの判断基準となる「同一労働同一賃金ガイドライン」の3つです。いずれも2026年10月1日から施行・適用されています。

区分 正式名称と番号 改正の核心 法的性質
省令(施行規則) パートタイム・有期雇用労働法施行規則(令和8年厚生労働省令第87号) 雇入れ時の明示事項に「法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」を追加 法的義務。違反は行政指導の対象となり、是正されない場合は10万円以下の過料(法第31条)
告示(雇用管理指針) 事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第202号) 過半数代表者の選出要件の厳格化と保護の強化、待遇差の説明方法の明確化、正社員転換の推進、福利厚生施設の便宜供与 規定ごとに義務、配慮義務、努力義務、望ましい措置に分かれる。法第18条に基づく指導・助言・勧告の基準
告示(ガイドライン) 短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(令和8年厚生労働省告示第203号) 最高裁判決を反映した手当・福利厚生の追加、正社員の待遇引下げによる対応の抑止、「正社員人材確保論」の制限 法第8条(均衡待遇)及び第9条(均等待遇)の解釈・適用の基準

この表を横に眺めるのではなく、縦の流れで読んでみてください。まず入口である労働契約の締結・更新の場面で、労働者が待遇差について説明を求められることを書面で知らせます。次に、労使協議の担い手である過半数代表者の正当性を確保し、説明の方法を明確にします。そして実体面では、最高裁判例の考え方に沿って待遇差が不合理かどうかを厳格に審査します。入口、手続、実体という3つの段階がすき間なくつながる構造になっているわけです。

なぜ「最大の転換点」なのか

2020年の本格施行のとき、就業規則と賃金規程の見直しまでは手を付けたものの、待遇差の説明の準備は後回しになっていたという企業も少なくなかったのではないでしょうか。説明を求める労働者が実際には少なかったことも、その一因と考えられます。

今回の改正は、その「後回し」を許さない仕組みを作りました。説明を求められることを書面で知らせる以上、説明を求める労働者が増えることは十分に見込まれます。そして説明の中身は、判例を成文化したガイドラインで審査されます。制度の器はそのままでも、器を運用する前提が変わった。これが「最大の転換点」と呼ぶ理由です。

今回のポイント

2026年10月改正は、施行規則、雇用管理指針、ガイドラインの3つをセットで理解することが大切です。どれか1つだけを見直しても、入口、手続、実体のどこかに穴が残ります。顧問先への説明でも、まずこの3層構造を示すと全体像が伝わりやすくなります。

それでは、また次回お会いしましょう。

次回予告(第2回)

第2回は、3層構造の入口に当たる施行規則の改正を取り上げます。労働条件通知書に加わった「たった1行」が、なぜこれほど重いのか。契約更新時の落とし穴も含めて解説します。

 

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