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第2回:労働条件通知書に加わった「たった1行」の重み <連載>労務管理と健康管理の実務 — 2026年から2028年の法改正を読み解く(全8回)

施行規則の改正で、待遇差の説明を求められることの明示が義務になりました。権利の「見える化」が実務に与える影響を確認します。

明示事項が4項目から5項目へ

こんにちは、分かりやすさNo.1社労士の先生の先生、岩崎です!

第2回は、3層構造の入口である施行規則の改正です。労働基準法第15条は、全ての労働者を対象に労働条件の明示義務を課しています。これに対してパートタイム・有期雇用労働法第6条第1項は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れるときに、さらに上乗せして明示すべき事項を定めています。

従来、施行規則第2条第1項が定めていたのは、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、そして雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口の4項目でした。今回の改正(令和8年厚生労働省令第87号)は、第4号として「法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」を新たに加え、従来の相談窓口の規定を第5号に繰り下げています。

新しい権利ではなく、権利の「見える化」

ここで誤解しやすい点があります。説明を求める権利そのものは、今回新しく生まれたものではありません。法第14条第2項は、制度の発足当初から「短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由等を説明しなければならない」と定めていました。

では、なぜ改めて明示を義務づけたのでしょうか。理由は単純で、この規定がほとんど使われてこなかったからです。立場の弱い非正規雇用の労働者が、自分でこの条文を知り、会社に対して「正社員との待遇差を説明してください」と申し出るのは、心理的にも実務的にも極めて困難でした。

そこで今回の改正は、既存の説明請求権を、労働契約を結ぶときの公式書面である労働条件通知書に書き込ませることにしました。新しい権利を作るのではなく、既にある権利を見える化し、行使しやすい環境を整える。ここに今回の省令改正の本質があります。

モデル様式は「窓口の特定」まで求めている

2026年4月30日付の基発0430第1号通達で改定されたモデル労働条件通知書には、「次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる」という文言とともに、部署名、担当者の職氏名、連絡先を記入する欄が設けられました。

注意していただきたいのは、「説明を求めることができます」と抽象的に書くだけでは足りないとされている点です。行政指導の対象となり得るため、請求先の窓口を具体的に特定して明示する必要があります。この明示義務を怠った事業主には、法第31条に基づき10万円以下の過料が科されることがあります。

最大の落とし穴は「契約更新」

実務で最も注意すべきなのは、労働法上の「雇入れ時」には有期労働契約の更新時も含まれるという原則です。つまり、新規採用者だけではありません。2026年10月1日以降に契約更新を迎える既存のパートタイマー、契約社員、定年後再雇用者の全員について、更新時の労働条件通知書で新しい明示を行う必要があります。

更新月が年間を通じて分散している企業では、1年をかけて順次新様式へ切り替わっていくことになります。更新のたびに旧様式が使われてしまう事態を防ぐには、人事給与システムの帳票や電子契約のテンプレートそのものを改定しておくことが欠かせません。担当者の注意力に頼るのではなく、ひな形の側で漏れを防ぐという発想が大切です。

実務のヒント

窓口を通知書に明記した時点で、会社は「説明を求められる準備ができている」ことを前提に見られます。通知書の改定と同時に、誰がどの資料を使って回答するのかを決めておきましょう。窓口だけを設けて回答の中身がない状態は、かえって紛争の火種になりかねません。

それでは、また次回お会いしましょう。

次回予告(第3回)

第3回からは、説明の「中身」を審査する同一労働同一賃金ガイドラインに入ります。最高裁判例がどのように条文化されたのか、賞与、退職手当、各種手当の判断基準を整理します。

 

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