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【第6回】高年齢者の労働安全衛生:エイジフレンドリーな職場づくり <連載> 定年制度(全8回)

こんにちは、分かりやすさNo.1社労士の先生の先生、岩崎です!

定年制度シリーズの第6回は、実務上とても重要な「高年齢労働者の安全衛生」について解説します。

定年延長や継続雇用が進む中で、職場の高年齢化が急速に進んでいます。しかし、それに伴って高年齢労働者の労働災害が増加傾向にあることをご存知でしょうか

今回は、2026年4月から義務化される対策も含めて、実務に直結する情報をお届けします。

高年齢労働者の労災が急増している現実

まず、厳しい現実をお伝えしなければなりません。高年齢労働者の労働災害は確実に増加しています。

特に60歳以上の労働者の災害率は、若年労働者と比べて明らかに高くなっているのです

この背景には、加齢に伴う身体機能の変化があります。視力や聴力の低下、反応速度の鈍化、バランス感覚の衰え、筋力の低下などにより、従来と同じ作業環境では災害リスクが高まってしまうのです。

2026年4月努力義務化!高年齢労働者対策

この深刻な状況を受けて、厚生労働省は労働安全衛生法を改正し、2026年4月1日から「高年齢労働者の安全衛生対策」を事業者の努力義務とすることを決定しました

これは、すべての事業場に影響する重要な法改正です!

具体的には、60歳以上の高年齢労働者を常時使用する事業場において、事業者は「高年齢労働者の安全と健康の確保に関する計画」を策定し、実施することが努力義務として義務付けられます

もはや「努力目標」ではなく、法的義務となるのです。

エイジフレンドリーガイドラインの重要ポイント

努力義務化に先立って、厚生労働省は2020年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を策定しています

このガイドラインが、2026年4月からの努力義務化の具体的な内容を示しています。

 

1. 安全衛生管理体制の確立

まず重要なのが、高年齢労働者の安全衛生を専門に担当する管理体制の確立です。

安全衛生委員会での検討はもちろん、産業医や衛生管理者との連携強化が求められます。

 

2. 職場環境の改善

照明の改善(明るさの確保、グレア対策)、段差の解消、手すりの設置、滑り止め対策、適切な作業台の高さ設定など、高年齢者にとって働きやすい物理的環境の整備が必要です。

 

3. 作業方法の見直し

重量物の取り扱い方法の変更、頻繁な姿勢変更を要する作業の軽減、単調な作業における適切な休憩の設定、危険作業からの配置転換の検討などが求められます。

 

4. 高年齢労働者の健康管理

定期健康診断の確実な実施、有所見者に対する適切な事後措置、高血圧や糖尿病などの生活習慣病対策、メンタルヘルス対策の充実が重要です。

実務で使える!エイジフレンドリー補助金

「そうは言っても、設備改善にはお金がかかる…」という声が聞こえてきそうですが、実は「エイジフレンドリー補助金」という強い味方があります!

この補助金は、高年齢労働者の安全衛生を確保するための設備改善等に対して、最大100万円(補助率はコースにより1/2、3/4、4/5)の支援を受けられる制度です。

毎年10月末が申請期限となっていますので、ぜひチェックしてください。

補助対象となる取組例

•身体機能の低下を補う設備・装置の導入(昇降装置、台車、リフター等)
•働く高年齢労働者の健康や体力の状況の把握等(体力測定、バランス測定機器等)
•高年齢労働者の特性を考慮した安全衛生教育(VR技術を活用した危険体感教育等)
•その他働く高年齢労働者のための職場環境の改善(照明設備、防音設備、空調設備等)

高年齢労働者のメンタルヘルス対策も重要

見落としがちなのが、高年齢労働者のメンタルヘルス対策です

定年後の継続雇用では、職務内容の変更、賃金の減額、職場での立場の変化など、大きなストレス要因が存在します。

「長年培った専門性を活かせない」「後輩に指示される立場になった」「体力的についていけない」といった悩みを抱える高年齢労働者は少なくありません。管理職や人事担当者は、これらの心理的負担に対する理解と配慮が必要です。

世代間のコミュニケーション円滑化

職場の高年齢化が進むと、異なる世代間のコミュニケーションも重要な課題となります

デジタルネイティブな若い世代と、アナログ中心で育った高年齢世代では、コミュニケーションスタイルが大きく異なります。

お互いの特性を理解し、相互に学び合える職場環境を作ることが、安全で生産性の高い職場づくりに繋がります。

研修やワークショップを通じて、世代を超えた相互理解を深めることが重要です。

健康経営との関連

高年齢労働者の安全衛生対策は、近年注目されている「健康経営」とも密接な関係があります。

労働者の健康保持・増進に積極的に取り組む企業は、生産性向上、医療費削減、離職率低下などの効果を得られることが実証されています。

高年齢労働者対策を「コスト」ではなく「投資」として捉え、中長期的な視点で取り組むことが重要です。健康で意欲的な高年齢労働者は、豊富な経験と知識を活かして企業に大きな貢献をもたらしてくれます。

実務チェックポイント

2026年4月の努力義務化に備えて、今から準備しておくべきポイントをまとめます

1.現状把握:自社の60歳以上労働者の人数と配置状況を確認
2.リスクアセスメント:高年齢労働者特有の災害リスクを洗い出し
3.職場巡視:エイジフレンドリーの視点での作業環境チェック
4.計画策定:具体的な改善計画の立案
5.予算確保:設備改善費用の予算化、補助金活用の検討
6.教育体制:管理者・労働者向けの安全衛生教育の準備

「人生100年時代」を見据えて

「人生100年時代」と呼ばれる現代では、70歳、80歳まで働くことも珍しくない時代になりつつあります。

高年齢労働者の安全衛生対策は、一時的な対応ではなく、今後数十年続く長期的な課題なのです

今から着実に取り組みを進めることで、安全で働きやすい職場環境を実現し、経験豊富な高年齢労働者の力を最大限に活用できる企業になりましょう。

次回予告

次回は、近年注目を集めている「ジョブ型雇用」と定年制度の関係について解説します

従来のメンバーシップ型雇用から職務中心の雇用へ移行する中で、定年制度はどのように変化していくのでしょうか?

新しい働き方の時代における定年制度の未来を探ります。お楽しみに!

 

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