


第11回:レッドラインと国家権力が衝突した日〜ペンタゴン・クライシス(2026年2月〜3月)の全経緯〜 <連載>服務規定作成のための実践ガイド(応用編・全5回)

第10回:シコファンシーとアライメント・フェイキング—禁止規定の呪縛と、協働が開く出口 <連載> 服務規定作成のための実践ガイド(応用編・全5回)

こんにちは、分かりやすさNo.1社労士の先生の先生、岩崎です!
今回から全5回にわたって、定年後再雇用制度の歴史的成り立ちと、これからの展望についてじっくり解説していきます。
「定年延長か再雇用か」「無期転換ルールの第二種認定計画」「70歳就業確保の努力義務」――こうした個別論点は皆さま日々の業務で扱っておられるかと思いますが、それらを一本の太い軸でつないで眺め直してみると、思いがけない景色が見えてくるはずです。
シリーズ初回となる本稿では、まずなぜこのテーマを今あらためて整理する必要があるのか、その大前提となる「人口動態の劇的変容」と、そこから生じた労働政策のパラダイムシフトについてお話しいたします。
総務省統計局の人口推計によりますと、我が国の総人口は2008年をピークに減少局面に入り、2011年以降はその減少傾向が完全に定着いたしました。
一方で、65歳以上の高年齢者人口は1950年以降一貫して増え続け、2012年には3000万人の大台を突破しています。2018年時点では、総人口に占める65歳以上の割合がついに28.1%に達し、過去最高を更新いたしました。
さらに注目すべきは、いわゆる団塊の世代――1947年から1949年生まれの方々――が2017年から順次70歳を迎え始めたことです。
その結果、70歳以上の人口だけで総人口の20.7%を占めるに至り、我が国は超高齢社会の新たな局面へと突入しています。
・2008年が日本の総人口のピーク(以後減少局面へ)
・2012年に65歳以上人口が3000万人突破
・2018年時点で65歳以上が総人口の28.1%
・70歳以上だけでも総人口の20.7%を占める時代に
この圧倒的な人口動態の変化は、我が国の労働市場と社会保障制度の前提を根底から覆すものです。
総人口の3割近くを占める65歳以上の方々が、旧来のライフコースのとおりに一斉に就労から離れて完全なリタイア生活に入ってしまえば、何が起こるでしょうか。
労働供給の枯渇によって潜在成長率は著しく低下し、社会保障の支え手も不足し、我が国の経済基盤は到底立ち行かなくなります。この自明の理を背景として、政府は高年齢者の位置付けを大きく転換いたしました。
すなわち、「社会保障によって保護されるべき引退層」から、「経済成長を支える中核的な労働力」へと再定義したのです。
この再定義こそが、高年齢者雇用安定法(以下、「高年法」と呼びます)を中心とする一連の法整備、ひいては私たち社労士や人事ご担当者が日々向き合う実務の根本にある政策思想です。
ここを押さえずに「65歳までの雇用確保義務」や「70歳までの就業確保努力義務」を語っても、表面的な条文解説に終わってしまいます。
本シリーズでは、定年後再雇用制度を2つの軸で読み解いていきます。
1つ目の軸は、公的年金制度との連動です。
我が国の高齢者雇用政策は、決して単独の労働政策として進化してきたわけではありません。厚生年金の支給開始年齢の段階的引上げという、財政上の至上命題と表裏一体で歩んできた歴史があります。
労働者が定年退職してから年金の受給が始まるまでの「無収入期間」をいかに塞ぐか――この一点が、雇用政策最大の駆動力となってきたわけです。
2つ目の軸は、「努力義務」から「義務化」へと至る、政府特有の段階的法整備のプロセスです。
我が国の労働法制では、企業に新たな負担を課す規制は、いきなり罰則付きで導入されることはほとんどありません。まずは行政指導の根拠としての努力義務、次に例外を伴う義務化、そして例外規定を撤廃しての完全義務化という、3段階のステップを踏むのが定石です。
65歳までの雇用確保措置は、まさにこのプロセスを教科書のようになぞって強化されてきました。
軸その1 年金支給開始年齢の引上げと雇用政策の連動メカニズム
軸その2 努力義務 → 例外付き義務化 → 完全義務化、という3段階強化のサイクル
この2軸を頭に入れて読み進めていただくと、現行制度の細部にも、これからの70歳就業確保の行方にも、すっと腑に落ちる視点が手に入ります。
現在、65歳までの雇用確保措置は完全義務化されてからすでに10年以上が経過しています。
厚生労働省の集計データによれば、企業の約7割が「継続雇用制度の導入」を選択しており、定年そのものを引き上げた企業は2割台にとどまっています。
この圧倒的な継続雇用偏重の裏側には、年功序列型賃金の構造、無期転換ルールとの衝突、同一労働同一賃金原則との緊張関係といった、複数の論点が複雑に絡み合っています。
さらにその先には、令和3年改正で創設された「70歳までの就業確保措置」という新しい努力義務があり、これがいつ完全義務化に至るかという将来予測の議論が続いています。
本シリーズの最終回では、この70歳就業確保の完全義務化について、過去の高年法改正のサイクルを踏まえた上で、客観的な時間軸の予測までお示しいたします。先生方のクライアント支援、人事ご担当者の中長期計画立案の一助となれば幸いです。
本日お伝えしたかったポイントは3点です。
第1に、我が国は総人口の3割近くが65歳以上という、世界に類を見ない超高齢社会に突入しています。
第2に、この人口動態の中で、政府は高年齢者を「保護対象」から「経済を支える労働力」へと政策的に再定義いたしました。
第3に、定年後再雇用制度を理解するには「年金との連動」と「段階的義務化」という2つの軸を頭に置いておくことが、極めて有効です。
次回以降は、いよいよこの2つの軸に沿って、制度の歴史と現在の運用実態、そして将来予測へと話を進めていきます。
どうぞお付き合いください。
第2回 「「年金と雇用の隙間」を埋める歴史 ── 60歳定年と年金支給開始年齢引上げの連動」
次回は、戦時体制下の労働者年金保険法から始まり、平成6年(1994年)改正に至るまでの厚生年金支給開始年齢の変遷を追います。
「保険料率34.8%」という衝撃の試算が、いかにして高年法改正の引き金を引いたのか。
年金財政と雇用政策がなぜここまで密接に連動してきたのか、その必然性を分かりやすく解き明かしていきます。



