労働基準法は、常時10人以上従業員がいる事務所に対して、決まった事柄が書かれた就業規則の作成・届出を義務づけています。さらに、届出の前には従業員代表からの意見聴取が必要で、届出後も法令を下回る就業規則がある場合には、労働基準監督署長から変更命令が出されます。
つまり、労働基準法が求める就業規則の役割は、労働条件を明確化し、事務所が自分に有利なように一方的に運用するのを防ぐことであり、さらには労働基準法を守らせることにあります。就業規則に記載すべき事項は法律で定められていますが、いずれも労働基準法上、事務所に義務を課している事項です。
また、作成後の就業規則は、周知が義務づけられていて、先に述べたように、周知された就業規則は、労働契約としての効力を持ちます。
つまり、就業規則を作成するということは、その企業が労働基準法を遵守する事務所であることを従業員に表明することでもあるという点は忘れてはなりません。
しかし、就業規則の役割は、労働基準法遵守・従業員保護だけではありません。複数の従業員が働く職場においては、統一的な職場ルールが必要となってきます。いわゆる「服務規律」と呼ばれるもので、社員の行動規範とも言えます。また、労働契約に付随する従業員の義務、たとえば、職務専念義務、秘密保持義務、業務命令遵守義務などもよく定められます。
つまり、労働契約の民事的な側面に関わる取り決めです。就業規則には、従業員保護の側面、職場ルールとしての側面、そして、労働契約としての側面があります。これらがバランスよく規定されていなければいけません。