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【第5回】実務対応のポイント~書面管理と退職勧奨の注意点~ <連載> 退職と職場環境づくり(全6回)

こんにちは、分かりやすさNo.1社労士の先生の先生、岩崎です!

連載第5回目の今回は、これまでの法的分析を踏まえて、企業の人事労務担当者が実務上留意すべき具体的な運用プロセスとリスク管理について詳しく解説します。

退職意思確認の厳格化と書面の徴求

口頭での「辞めます」「わかりました」というやり取りは、言った言わないのトラブルの元凶であり、法的安定性を欠きます。必ず書面又は電磁的記録による意思表示の固定化が必要です

実務上、「退職願」と「退職届」を明確に使い分けることが推奨されます。「退職願」は合意退職の申込みであり、労働者が退職を希望し、会社の承諾を求める形式です

「〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます」といった文言となります。会社が承諾するまでは雇用関係が継続し、業務引継ぎや退職日の調整等の交渉余地が生まれます。また、承認前であれば労働者は撤回が可能です。

一方、「退職届」は辞職の意思表示であり、労働者が確定的に退職を通告する形式です

「〇月〇日をもって退職します」という断定的な文言となります。会社に到達した時点で効力が発生し(民法627条の期間経過により終了)、会社の承諾は不要です。到達後の撤回は原則として認められません。

受理から承諾までのタイムライン管理

合意退職を目指す場合、白頭学院事件のリスク(承諾到達前の撤回)を排除するため、以下のフローを迅速に回す必要があります。

まず「受理」の段階では、直属の上司が退職願を受け取ります。この際、「預かりますが、正式な承認は人事部長(又は社長)が行います」と伝え、即時承諾権限がないことを明示することが望ましいでしょう

これは不用意な承諾発言を防ぐためです。次に「決裁」として、社内規定に基づき、権限者が承認決裁を行います。

そして「通知」として、決裁後、速やかに「退職承認通知書」を本人に交付するか、メール等で「退職願を受理し、承認しました。退職日は〇月〇日となります」と通知します。この通知が本人に到達した瞬間、合意解約が成立し、以後の撤回は不可能となります。

退職勧奨の適法性と限界

企業が人員整理や能力不足を理由に労働者に退職を促す「退職勧奨」は、法的には単なる「合意退職の申込みの誘引」に過ぎず、労働者はこれに応じる義務はありません

退職勧奨が行き過ぎると、違法な権利侵害(不法行為)となり、損害賠償の対象となります。下関商業高校事件(最一小判 昭和55年7月10日)は、「退職勧奨は、被勧奨者が何らの拘束なしに自由に意思決定できるものでなければならない」とし、「被勧奨者が退職勧奨に応じないことを表明しているのにかかわらず、多数回、長時間にわたり執拗に退職を勧奨し」た場合は違法としました。

実務上の禁止事項を明確にしておきましょう。まず「執拗さ」について、本人が「辞めません」と明確に拒絶しているにもかかわらず、日を変えて何度も呼び出すことは違法となり得ます

「長時間・監禁」として、部屋に鍵をかけたり、長時間にわたり退出させないことも許されません。「威迫」として、「辞めなければ懲戒解雇にする」「僻地に飛ばす」といった不当な脅しを行うことも違法です。

退職パッケージの活用

外資系企業や「外部労働市場型」の人事管理を行う企業では、退職勧奨を円滑に進めるために「退職パッケージ」を提示することが一般的です

これは特別退職金(割増退職金)の支給や、再就職支援サービスの提供を含み、労働者が合意退職を選択するための経済的インセンティブとなります。

裁判例においても、十分な退職パッケージの提示は、解雇回避努力の一環として、あるいは退職勧奨の正当性を補強する要素として肯定的に評価されています。

次回予告

いよいよ次回は最終回です。
法的なテクニック以前の本質的な問題、すなわち労働者が「辞めたい」と思わない職場環境づくりについて解説します

最高のリスクマネジメントは、そもそも紛争を起こさないことです。お楽しみに!

 

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