


【第6回】変形労働時間制における周知義務の重要性<連載>変形労働時間制の有効性をめぐる重要ポイント

【第5回】変形労働時間制の導入方法と効力 – 労使委員会での決議から就業規則の整備まで<連載>変形労働時間制の有効性をめぐる重要ポイント

今回は変形労働時間制の手続き的要件、特に労使協定と適切な労働者代表選出の重要性についてお話をします。
1年単位の変形労働時間制など、労使協定の締結が必要な変形労働時間制を導入する場合、その協定が法的に有効であることが大前提となります。
特に事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)との協定締結が必要ですが、この過半数代表者の選出方法が適正でなければ、協定自体が無効となり、結果として変形労働時間制も無効になってしまうのです。
例えば、大阪地裁令和2年12月17日判決では、1年単位の変形労働時間制の導入に必要な労使協定について、過半数代表者が労働者による挙手等の民主的な手続きによって選出された証拠がないとして、協定を無効と判断しています。使用者が一方的に代表者を選任したり、形式的な手続きのみで選出したりした場合は、適法な代表者とは認められないのです。
他にも同様に、過半数代表者の選出が不適法であったことを理由に変形労働時間制が無効とされた事例は少なくありません。
これらの事例は、労使協定の締結という手続き的な要件が、単なる形式ではなく、労働者の集団的な意思を反映するための重要なプロセスであることを示しています。特に過半数代表者の選出は、労働条件の不利益変更にもつながり得る変形労働時間制の導入にあたって、労働者側の実質的な関与を保障する上で不可欠な手続きなのです。
企業の担当者は、代表者の選出プロセス(投票、挙手など)が民主的かつ公正に行われたことを客観的に証明できるよう、記録を残しておくことが重要です。
手続き上の瑕疵は、制度の内容自体の妥当性とは無関係に、変形労働時間制全体の有効性を覆す可能性があることを忘れないようにしましょう。
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