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【第8回・最終回】定年制度の未来を展望する:これからの方向性と課題 <連載> 定年制度(全8回)

こんにちは、分かりやすさNo.1社労士の先生の先生、岩崎です!

定年制度シリーズも今回で最終回となります。これまで7回にわたって、歴史から現代的課題まで幅広く解説してまいりました。

最終回は、これまでの内容を踏まえて、日本の定年制度がこれからどこに向かおうとしているのか、そして私たち実務家が準備すべきことは何かを考えてみたいと思います。

定年制度が直面する三つの大きな潮流

現在、日本の定年制度は三つの大きな潮流の交差点に立っています

 

◆第一の潮流:不可逆的な少子高齢化

最も根本的な変化要因が少子高齢化です。生産年齢人口の減少は今後も続き、労働力不足は慢性化していきます。

企業にとって、経験豊富な高年齢労働者の活用は「選択肢」ではなく「必然」となりつつあります

 

◆第二の潮流:技術革新とデジタル化

AI、IoT、ロボティクスといった技術革新により、労働の内容そのものが変化しています。

肉体労働から知識労働への転換が進み、高年齢労働者でも活躍できる職域が拡大している一方で、デジタルスキルの習得が新たな課題となっています

 

◆第三の潮流:働き方の多様化とグローバル化

テレワークの普及、ジョブ型雇用の導入、グローバルスタンダードへの対応など、働き方の多様化が急速に進んでいます。

画一的な制度から、個人の価値観やライフスタイルに合わせた柔軟な制度への転換が求められています

 

2030年代の定年制度はこうなる!

これらの潮流を踏まえて、2030年代の定年制度を展望してみましょう

 

「70歳定年」が標準になる

現在、70歳までの就業機会確保措置が努力義務とされていますが、2030年代には実質的に「70歳定年」が標準となる可能性が高いでしょう

年金支給開始年齢のさらなる引き上げが検討される中で、雇用と年金の接続は不可欠だからです。

 

「選択定年制」の普及

一律の定年年齢ではなく、60歳、65歳、70歳など複数の選択肢から個人が選べる「選択定年制」が普及すると予想されます

早期退職を
希望する人から長期就業を希望する人まで、多様なニーズに対応できる制度です。

 

「職務別定年制」の導入

ジョブ型雇用の普及に伴い、職務の性質に応じて異なる定年年齢を設定する「職務別定年制」も増加するでしょう

研究開発職、営業職、管理職、現場作業職など、職務特性を考慮した合理的な制度設計が求められます。

 

「定年制廃止」企業の増加

年齢による一律の雇用終了を廃止し、個人の能力と意欲に基づいて雇用を継続する企業も増加するでしょう

特に、高度な専門性を要求される職種や、人材不足が深刻な業界では定年制廃止が進むと予想されます。

 

年金制度改革の影響

定年制度の未来を考える上で避けて通れないのが年金制度改革です。

 

支給開始年齢の段階的引き上げ

諸外国の動向を見ると、年金支給開始年齢の67歳、68歳への引き上げは避けられない可能性が高いでしょう。これに伴い、企業の雇用確保措置もそれに対応する必要があります。

 

年金と就労の柔軟な組み合わせ

完全退職してから年金受給するのではなく、就労しながら部分的に年金を受給するという柔軟な制度への移行が進むでしょう

在職老齢年金制度の見直しなども含めて、就労と年金の新しい組み合わせが模索されています。

 

企業年金・退職金制度の変革

公的年金制度の変化に対応して、企業年金や退職金制度も大幅な見直しが必要になります。従来の一時金中心から、年金給付や分割支給を組み合わせた制度へと変化していくでしょう。

 

労働安全衛生への対応

高年齢労働者の増加に伴い、労働安全衛生対策はますます重要になります。

 

エイジフレンドリー職場の標準化

2026年4月から努力義務化される高年齢労働者対策を契機として、エイジフレンドリーな職場環境が標準となるでしょう

照明、段差解消、作業方法の見直しなどが当たり前の配慮となります。

 

健康経営との一体化

高年齢労働者対策と健康経営を一体的に推進する企業が増加するでしょう。

労働者の健康保持・増進は、生産性向上と人材確保の両面で重要な経営戦略となります。

 

予防医学の活用

定期健康診断にとどまらず、予防医学的なアプローチで高年齢労働者の健康管理を行う企業が増えるでしょう。

AIを活用した健康リスク予測や、個人別の健康管理プログラムなどが普及すると予想されます

 

実務家が今すぐ準備すべきこと

最後に、私たち実務家が今すぐ準備すべきことをまとめておきましょう。

 

1. 法改正動向の継続的フォロー

定年制度に関する法改正は今後も続きます

高年齢者雇用安定法、労働安全衛生法、年金制度など、関連する法令の動向を継続的にフォローし、顧問先への適切なアドバイスに備えましょう。

 

2. 多様な制度モデルの研究

選択定年制、職務別定年制、定年制廃止など、多様な制度モデルの研究を深めておきましょう

顧問先の業界特性や企業規模に応じて、最適な制度を提案できる知識とノウハウを蓄積することが重要です。

 

3. 労働安全衛生の専門知識習得

2026年4月の努力義務化を控え、高年齢労働者の労働安全衛生に関する専門知識は必須となります

エイジフレンドリーガイドラインの内容を熟知し、具体的な改善提案ができるよう準備しましょう。

 

4. 人事制度全体の見直しスキル

定年制度の変更は、賃金制度、評価制度、福利厚生制度など、人事制度全体に影響を与えます。

部分的な対応ではなく、制度全体を俯瞰して最適化できるスキルを身につけましょう。

 

5. 労使コミュニケーションの促進

制度変更には労使双方の理解と協力が不可欠です

労働組合や従業員代表との円滑なコミュニケーションをサポートし、合意形成を促進できるファシリテーション能力を磨きましょう。

 

変化を味方につけて

定年制度を取り巻く環境変化は確かに大きく、対応は容易ではありません。しかし、これらの変化は新たなビジネスチャンスでもあります。

変化を恐れるのではなく、変化を味方につけて、顧問先企業により良い労務管理を提供していきましょう。

私たち社労士の専門性と経験は、この変革期において必ずや大きな価値を発揮するはずです

シリーズを振り返って

8回にわたる定年制度シリーズはいかがでしたでしょうか?明治時代の萌芽から現代の課題、そして未来への展望まで、幅広くお話しさせていただきました。

定年制度は単なる人事制度ではなく、社会経済の変容を映し出す鏡であることがお分かりいただけたでしょうか。

私たち実務家は、この鏡に映る変化を敏感に察知し、顧問先企業の発展に貢献していく使命があります

これからも、皆様と一緒に学び、成長していければと思います。定年制度の今後の動向についても、折に触れてお伝えしてまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします!

 

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