年次有給休暇をフルに活用しましょう。
外資系企業からの相談事例でおおいのが、休日と時間外労働の取扱いについてです。
今日はこの2点について簡単にご紹介しましょう。
日本には日本特有の休みがあります。たとえば年末年始休暇やお盆休みがその代表的なものといえます。
日本人にとって新年の行事は大変おめでたいイベントのひとつです。その新年を祝うための準備として年末は休日とし、家中を掃除します。そして家族で新年を祝うために1月1日から3日間は休むという習慣があります。
お盆休みとは通常8月13日~16日の4日間です。これは日本で古くからある習慣で、亡くなった先祖の精霊を我が家に迎え供養し、家族と亡き人が共に過ごすというものです。
では、あなたが持っている雇用契約書や就業規則を確認してください。「当社の休日は、土曜日、日曜日、国民の祝日、お盆休み、年末年始とする」と記載されていませんか?この文章で分かるのは、年末年始とお盆休みは日本の祝日として法律により定められた祝日ではない、ということです。
祝日でもないのに、古くからの習慣でお盆休みや年末年始は別途「休日」として働く人にプレゼントされているのです。
でもこんな事実もご存じですか?
法律で定める年間の祝日数(2009年)
日本:19日
中国:17日
韓国、ロシア:16日
フランス、トルコ:15日
ドイツ、イタリア、ブラジル:14日
米国、スイス、スウェーデン:11日
オーストラリア:9日
英国:8日
日本の祝日の日数は、世界でもトップランクです。
その反面、日本の年次有給休暇の取得率はどうかというと、2005年から2010年の5年間では、46%、47%台を行ったり来たりしています。海外主要国の中では取得率は非常に低いのが事実なのです。
なぜ日本人は休暇を取らないのでしょうか?
「祝日が多すぎるから、年次有給休暇を取得しない」というわけではないようです。日本人は組織とかチームワークを重視しますから「上司や同僚が休まないから自分も休暇を取りづらい」といった意識が強いのです。
日本の労働基準法にある「計画年休」という制度をご存じでしょうか。
これは、各社員に与えられた年次有給休暇について、会社と従業員の代表が協定を締結したうえで、社員が取るべき休暇の時期を会社があらかじめ特定する、という制度です。
法律で定める祝日が多い日本ですから、お盆休みや年末年始休暇まで会社の休日として取り扱う必要はないと思うのです。この計画年休制度をお盆休みと年末年始休暇の時期に設定すれば、社員の年次有給休暇の取得促進にも繋がるはずですから、「当社の社員は年休を中々取ってくれない」という会社においては、ぜひ制度の導入を検討してください。
そうそう、残業代の単価についてもアドバイスしておきますと、残業代の単価は、各社員の給料額を労働日の日数で除して算出されます。つまり、休日の日数が多いぶん、労働日が減りますから、残業代の単価も休日が多い分、高くなるということを覚えておいてください。
年次有給休暇は、退職するときまで大切にとっておこう、と考える方が多いようです。でも、そもそも年次有給休暇は、心身をリフレッシュするためにあるのですから、退職日までとっておこう、といった考えはぜひ改めていただき、在職中にフルに活用してください。気分がリフレッシュすればきっと良いことがあるはずです。
それから残業について。あくまでも法律の原則の話ですが、社員が残業したときは、雇用主は必ず割増賃金を支払わなければなりません。「4時間残業させたから明日は4時間遅く出社していいよ」、という雇用主がときどきいますが、休みを与えることで残業を相殺することは原則としてできません。
雇用主には、払うべきものはキチンと払ってもらっていただき、その分、社員は働く皆さんはキチンと働く・・・これが理想的な働き方であると私は考えます。
特定社会保険労務士
中西恵津子